Drag Reduction

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 航空機を今以上の速度で飛行させようとすると,音よりも速く飛ぶ必要があります.
この速度を超音速と呼びますが,超音速で飛行すると現在の航空機よりもはるかに燃費が悪くなってしまうという問題点があります.
この問題を解決する方法としてレーザーで空気を加熱するという方法が提案されており,この研究室ではこの方法を使ってより効率よく超音速で飛行する方法を研究しています.

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図1 超音速機の抵抗低減方法

研究内容

本研究では,コンコルド以来運用していない超音速旅客機の復活を目指して研究を行っています.コンコルドの運用が中止された原因の1つに,燃費の悪さがあります.超音速航行時では機体から衝撃波が発生してしまい,これによって亜音速飛行時には発生しなかった造波抵抗が発生してしまいます.抵抗が増加することにより,燃費が悪化してしまうのです.

そこで本研究では,繰返しレーザーパルスを用いて低密度場を生成して衝撃波と干渉させることで抵抗を低減し,超音速機の空力性能を向上させることを目指しています.この方法を”Fly By Light Power (FBLP)”と呼称し,実験と数値計算の両面から研究を進めています.

これまでの成果

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図2 実験装置概略図

実験には,本研究室で作製した吸い込み式の超音速風洞を用います(図2).マッハ数1.94の風洞内に直径20mmの円柱模型を設置することで,模型前方に弓状衝撃波を発生させ,衝撃波の上流側には繰返しレーザーパルスを用いて低密度バブルを生成させました.その結果,両者の干渉によって衝撃波の変形が見られ,これによって低減した抗力を模型後方のロードセルで測定したところ,定常状態における抵抗が20%低減し,このときのエネルギー付与効率はη=10に達することを確認しました(図3~5).これは数値計算により,バロクリニック効果で生じる渦が抵抗低減に関して大きな影響を与えていることが分かりました.

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図3 弓状衝撃波の変形
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図4 抗力時間履歴
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図5 エネルギー付加効率
vs.投入エネルギー
なぜ抵抗が減るのか?
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図6 バロクリニック効果

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図7 Virtual cone

密度勾配と圧力勾配のある流体同士では,渦度が発生します.これをバロクリニック効果と言います(図6).本実験の場合,衝撃波前後の圧力勾配が生じています.また,レーザーによって空気を局所的に加熱することで低密度領域が発生しており,周囲の空気との間に密度勾配が生じています.つまり,衝撃波と低密度バブルが干渉する際に,バロクリニック効果によって渦度が軸対称に発生し,模型前方にドーナツのような形をした渦輪が現れます.
レーザーの発振周波数を大きくして,高繰返しで低密度バブルと衝撃波を干渉させると,多くの渦輪が模型前方に滞留し,virtual coneと呼ばれる領域を形成します(図7).Virtual coneは模型前方にあたかも円錐が存在するかのように流れを変化させ,衝撃波の形状を変化させます.これによって衝撃波は減衰し,航空機にかかる抵抗は低減することができるのです.

blunt-cylinder body

0kHz laser energy deposition

80kHz laser energy deposition

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関連論文

  • T. Sakai, Y. Sekiya, K. Mori, and A. Sasoh, Proceedings of the Institution of Mechanical Engineers, Vol. 222, Part G: Journal of Aerospace Engineering, pp. 605-617, 2008.
  • Sakai,T,”Supersonic Drag Performance of Truncated Cones With Repetitive Energy Depositions “,The International Aerospace Innovation , Vol. 1, No. 1, pp. 31-43, 2009.
  • Akihiro Sasoh,Yohei Sekiya,Takeharu Sakai,Jae-Hyung Kim and Atsushi Matsuda, AIAA Journal, Vol. 48, No. 12, 2010, pp. 2811-2817.
  • Jae-Hyung Kim, Akihiro Sasoh and Atsushi Matsuda, Shock Waves, Vol. 20, pp.339-345, 2010.
  • Jae-Hyung Kim, Atsushi Matsuda, Takeharu Sakai, Akihiro Sasoh, AIAA Journal, Vol. 49, No. 9, pp. 2706-2078, 2011.
  • Jae-Hyung Kim, Atsushi Matsuda, Akihiro Sasoh, Physics of Fluids, Vol. 23, ArtID 021703,2011.
  • Iwakawa A., Sakai T., Sasoh A., Transactions of the Japan Society for Aeronautical and Space Sciences, Aerospace Technology Japan, Vol. 11, pp.53-66, 2013.
  • Sasoh S., Kim J. H., Yamashita K., and Sakai T, Shock Waves Vol. 24, No. 1, pp. 59-67, 2014.
  • 岩川輝,大須賀健,摩嶋亮祐,酒井武治,佐宗章弘,  日本航空宇宙学会論文集,Vol. 62, pp. 99-106, 2014.

Sonic boom

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 ヨーロッパやアメリカに飛ぶには長時間飛行を強いられ,体への負担は大きくなります.この負担を減らす為には飛行時間を減らすのが一番効果的で,その為には飛行速度を上げる必要があります.現在の旅客機は全て亜音速と呼ばれる音の速度よりも遅い速度で飛行しています.音の速度を超えると亜音速の時には無かった騒音等が発生します.これを減らし,音の速度を超えて飛行する旅客機を開発するために研究を進めています.またJAXAと共同で研究を進めています.
ソニックブーム

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図1 ソニックブーム

超音速航行時に機体各所から発生した圧力波は大気中を伝播する間に整理統合され,1つの大きな圧力波として地上へ到達しますが,この圧力波は人の耳には大きな爆発音として聞こえます.この一連の現象のことをソニックブームと呼びます.ソニックブームによる騒音のため,現在陸地の上空を超音速で飛行することは基本的に禁止されているため,超音速旅客機を実現するためには騒音低減が必要不可欠となっています.

バリスティックレンジを用いた実験

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図2 バリスティックレンジ

本研究室では騒音低減形状の研究・開発を行っています.本研究室では,数値シミュレーションのみではなく,バリスティックレンジと呼ばれる弾道自由飛行装置を用いて試験模型から発生する圧力波を実験的に計測するという実験的アプローチも含め研究を行っています.実験的に自由飛行中の試験模型から発生する圧力波を計測できる装置は日本中でも限られており,JAXAで行われている静粛超音速機技術開発グループとも共同で研究を行っています.
多段階断面積変化による後端ブーム緩和

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図3 多段階断面積変化による後端ブーム緩和
当研究室の研究成果として飛行物体の後端を多段階で断面積変化,すなわち,段をつけることによる,後端ブームの緩和があります.バリスティックレンジを用いる実験の特徴として,自由飛行する物体による圧力波を測定できるため,支柱などが必要な風洞では取得しにくい後端による圧力波形を取得することができます.
その特徴を生かし,後端からの圧力波に着目して後端に段々をつけることで,段がついていないものよりも緩やかに時間変化する圧力波形を得ることができました.

関連論文

  • Akihiro Sasoh and Shin Oshiba, Review of Scientific Instruments, Vol. 77, No. 10, ArtID 105106, 2006.
  • Sasoh Akihiro, Takahiro Imaizumi, Atsushi Toyoda, Takeshi Ooyama,  AIAA Journal, Vol.53, No.9, pp. 2781-2784, 2015.

Shock Wave Boundary Layer Interaction

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超音速での飛行における問題には,抗力の増大やソニックブームの他に衝撃波-境界層干渉(Shock Wave-Boundary Layer Interaction)といわれる現象があります.この現象は機体表面から生成する境界層と音速を超えて飛行するため生じる衝撃波が干渉することにより起こります.この干渉領域内では,衝撃波背後の高圧が境界層内を伝播して境界層の逆圧力勾配を強め,境界層の剥離や剥離に伴う非定常な流れ場が作られてしまい,エンジンの効率の低下や機体の制御を難しくさせる原因となります.

我々の研究室では,衝撃波-境界層干渉における境界層の剥離や非定常な流れをレーザーエネルギー付加という手法を用いて制御を行う研究をしています.

軸対称Cyliner-Flareモデルを用いた風洞実験

本研究室での風洞実験では図1のような軸対称Cyliner-Flareモデルを用いており,Cylinder部分から境界層が発達し,Flare部分により生じた衝撃波と干渉することで,衝撃波-境界層干渉領域が生成します.このようにして作られた衝撃波-境界層干渉に対してレーザーエネルギー付加を行い流れ場の制御を行います.レーザーエネルギー付加は図2のようにモデル前方に生成する弓状衝撃波の上流に高繰り返しで出力されるレーザー光を集光させ,それにより生じた高温低密度の領域を流れに乗せて衝撃波-境界層干渉領域へと運ぶことで行います.

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図1 軸対称Cyliner-Flareモデル

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図2 レーザーエネルギー付加

これまでの研究結果

本研究室では軸対称Cyliner-FlareモデルのFlare角度を変化させて様々な条件の衝撃波-境界層干渉領域をつくり,それに対してどのようなレーザーエネルギー付加の影響があるのかを実験により検証を行いました.図3にはレーザーエネルギー付加を行った場合と行っていない場合のシュリーレン画像を示します.こららの画像からはエネルギー付加を行うとSlip Lineが無くなっていることが確認され,境界層の剥離が抑制されていることがわかりました.

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レーザーなし           f=60kHz

30度のフレア角場合ー境界層剥離の抑制

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レーザーなし           f=60kHz

90度のフレア場合ー貫流振動の抑制

図3 貫流の制御

関連論文

  • T. Osuka, E. Erdem, N. Hasegawa, R. Majima, T. Tmaba, S. Yokota, A. Sasoh, K. Kontis, Shock Waves, Vol. 26, No. 9, ArtID 096103, 2014.
  • T. Tamba, H. S. Pham, T. Shoda, A. Iwakawa, A. Sasoh, Physics of Fluid, Vol. 27, 091704, 2015.