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大気圏突入時に宇宙機を守る役割を果たすアブレータは加熱を受け損耗していきます。そのため予め機体を守るために必要なアブレータの厚さを見積もる必要がありますが、地上試験では実際の加熱環境を完全に再現できないため現状では余分な厚さを見積もって作成されており、重量の増加が問題となっています。この状況を改善するために実際のフライトでの計測を可能にし、重量軽減によるフライトのコストダウンに向けた有用なデータを構築したいと考えています。

アブレータによる熱防御

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大気圏突入と熱防御

 宇宙機は惑星の大気圏に突入する際に,その速度の大きさゆえ激しい加熱を受けます.小惑星探査機「はやぶさ」では大気圏再突入時の速度は秒速13km,表面温度は3000℃にも達したといわれています.このような厳しい環境から宇宙機を守るためにアブレータと呼ばれる炭素などの繊維に樹脂を含浸させた断熱複合材料が使用されてきました.

今後の展望

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アーク加熱風洞での試験

 アブレータは加熱によって,樹脂の熱分解や炭素繊維の昇華反応など物質の相変化を起こすことにより熱を消費します.また,熱分解により気体となった樹脂が吹き出すことで熱を遮断する効果もあります.このようにアブレータは相変化により自らを損耗させながら宇宙機を熱から守るので,必要な厚みを事前に見積もる必要があります.
今後日本で計画される宇宙ミッションでは,これまでより軽いアブレータの適用が必要とされています.新しいアブレータの熱防御性能を評価するため,アーク加熱風洞と呼ばれる大気圏突入時の加熱環境を模擬できる装置を用いて加熱し,損耗量や表面と内部の温度変化履歴などを計測し,どれぐらいの厚みが必要かを,事前に正確に予測できる数学モデルの構築を行っています.