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レーザー推進は、固体推進剤に対し遠方からレーザーを照射することで推力を発生させる、次世代宇宙機の推進法です。
本研究室ではこれまで、高速度カメラを用いた推力発生原理の解明や、独自の打ち上げ方法の構築・デモンストレーションを行ってきました。
現在は推力および推力効率改善を志向しており、レーザーの照射方法や推進剤の内部構造に着目した研究を行っています。
図1 レーザー推進原理 |
レーザー推進
レーザー推進とは,ロケット本体に設置した固体推進剤に対し,レーザーを照射することで気化およびプラズマ化させ,その膨張の反力を利用した推進法です(図1).エネルギーの一部をレーザーによって外部から供給することで,従来の推進法に比べて搭載推進剤を大幅に低減できる可能性があります.そのため,推進剤や構造の重量を低減させたり,より多くの人や物を一度に輸送できるようになります.また,遠隔からエネルギーを供給できる利点を生かし,スペースデブリの除去や人工衛星の姿勢制御などへの応用も期待されます.
どういう仕組みで推力が生じているか?
レーザー照射によって固体燃料が気化・プラズマ化して吹き出す現象をレーザーアブレーションと言います.この現象を高速度カメラを用いて可視化を行い,運動量発生メカニズムの解明を行いました(図2).その結果,レーザー光吸収直後にアブレーションが発生し,その膨張によって力積が生じるという推力発生のメカニズムを実験にて証明することができました.ほかにも,大気圧中ではプラズマシールドの影響により,レーザー効率の低下が起きていることなど多くのことが分かってきています.
図2 シュリーレン画像(TEO CO2レーザー,ポリアセタール,撮影速度1000kfps)
燃料をまったく搭載せずに打ち上げられないか?
図3 チューブ内飛行実験 |
現在,推進剤が宇宙機の質量に占める割合は非常に大きく,できる限り低減することが望まれています.その究極の形として推進剤を宇宙機から完全に分離した推進方法を考案し,デモンストレーションを行いました(図3).地面から垂直に立てたチューブ管の壁面に固体燃焼を設置し,下側からレーザーを照射することにより,アブレーションの反力および管内の上昇圧力を利用して飛翔体が推力を得るものであり,固体燃料を飛翔体に搭載した従来の方法に比べて,大幅にレーザー効率を向上させることができました.
与えられたエネルギーからより推力を得られないか?
図4 レーザー投入方法と実験装置 |
レーザー推進におけるレーザーの投入方法と得られる推力の関係は未だ分かっていません.そのため現在はさまざまなパルスの条件でレーザーを照射し,得られる推力を調査しています(図4).これまでに,パルスレーザーの繰返し照射にて連続して発生する力積を精度よく測定するために,ねじれ振り子式力積測定装置を独自に開発しました.この仕組みは,振り子の一端に設置した固体燃料に対しレーザーを照射し,アブレーションにより生じた振り子の変位を計測するというものです.振り子の四半周期を超えない限り,その間に生じたトータルの力積を測定することができます.